空間をセルに分割し、その中の原子が居られる場所を有限に限定するというポッツ格子気体模型を用いて、固体ー液体ー気体の三相を記述し、特に気体と共存している結晶の温度上昇による表面融解を調べた。まず、分子場近似を用いて、三重点を含んだバルクの相図を求めた。次に、層毎の分子場近似を用いて、表面融解層の厚さが三重点付近で異常性を示すことを見いだした。この異常性は原子間の相互作用に依存しており、短距離力の場合は厚さは三重点からのずれに対数的に依存した。これは、界面の広がり(diffuseness)によるものである。一方、ファン・デル・ヴァ-ルス力の場合には巾乗則に従うのが見いだされた。これは長距離の相互作用エネルギ-によるものである。三重点から離れたところでは、界面の広がり効果のため、融解層はエネルギ-だけの寄与を考えたときより厚くなることがわかった。古川ら北大グル-プによる、氷の表面層の厚さを測る実験で、厚みが急速に厚くなることと関連があるのかも知れない。ここまでの結果は、1990年8月の第21回結晶成長国内会議、10月の日本物理学会分科会で発表し、第4回Topical Meeting of Crystal Growth Mechanismでも発表した。 モンテカルロ・シミュレ-ションにより、表面融解に対する揺らぎの効果を調べているが、まだバルクの相図について定性的なものを得るまでにしか至っていない。 微粒子ではその融解温度がバルクのものより低くなることが知られているが、現在のモデルで微粒子の表面が解けて、融点(今は三重点)が下がることを定量的に解析している。
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