研究概要 |
反強誘電性スメクチック相(S_mC_A^*相)は,分子の持つ電気分極が,隣りの層では反平行に整列している構造を持つ,最近液晶MHPOBCで発見された液晶相である。このS_mC_A^*相は液晶ディスプレイへの応用に有力視されている。我々は,このMHPOBCのS_mC_A^*相が室温でも安定に存在する可能性を求めて,まず,左らせん体と右らせん体の混合物の相図をDSC測定によって調べた。その結果は,50%ー50%の混合比を除いて,全混合比領域で,C_A相は100℃〜50℃に存在することが判明した。次に光学純度の良いMHPOBCで存在するI_<SO>ーS_mAーS_mC_α^*ーSC^*ーS_mC_γ^*ーS_mC_A^*相のうち,C_A^*相はじめ,最近フェリ誘電相といわれるC_γ^*相の構造を調べるために,スピンラベル済の12ドキシル・ステアリン酸メチルと3ードキシルー5_αーコレスタンを加えてESR測定を行なった。始めに5φの石英試料管に試料を入れ,S_mA相で磁場の中で液晶分子を配列させ,温度を下げて,各相でESR測定を行なった。測定磁場を配列磁場と平行又は直角にしたとき,ESRスペクトルは,分子配列の程度に応じて窒素の超微細構造に変化が見られた。またスピンラベル分子の異方的運動や,液晶分子のアルキル基の鎖のジグザグ的揺らぎ運動が見られた。次に揺らぎの分散を調べるために,測定の変調磁場の周波数を80Hzと100KHzにしてESR測定を行った。マイクロ波電力が低いときは,スペクトルに本質的変化はなかったが,100mW程度になると,スペクトルに差が現らわれるように思われる。この差を精度よく測定するために,スペクトルの積算や減算をコンピュ-タと連結して,自動的に行なうようにする必要がある。この補助金で購入したロックイン・増幅器と他の発振器とを組み合わせて,変調磁場周波数をもっと広く変えて同様の測定を行ないつつある。
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