研究概要 |
連想記憶モデルとしての神経回路網の性質について,記憶想起が力学系としてのアトラクタによるものであるとするアトラクタニューラルネットの枠組みの中で,神経回路網の統計力学とりわけ相転移の問題を中心に神経回路網の静的,動的挙動について議論した。従来の平衡系統計力学の枠を超えた新しい処方戔なり概念構成などが必要になってくる,生物系神経回路網に一歩近づいたモデルを対象に非平衡統計力学の理論を展開する形で,大自由度力学系としてのニューラルネットの巨視的性質あるいは統計的性質について調べることをおこない,主として以下に述べるような成果を得ることができた。 1.非対称相互作用を持つ確率ニューラルネット(イジングスピンネット)における様々な動的挙動を非平衡相転移として位置づけることができた。 2.イジングスピンネットとアナログネットの間の相互関係をあきらかにして,連想記憶モデルとしての性能比較を記憶容量とスピューリアス状態数の面より行った。 3.アナログネットの記憶容量を一般的に算出するためのセルフコンシステントシグナルノイズ解析(SCSNA)を提案しその有効性を確認した。 4.非単調伝達函数を持つアナログネットの解析にSCSNAを適用することにより,記憶容量増大や完全記憶想起など,従来には見られなかったネットワーク性能上の飛躍的改善の計られることがわかった。
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