研究概要 |
申請者による最新のまとめ(河野・古瀬、1989)によって、瀬戸内海は日本周辺における重力測定値の最大の空白域であることが明らかとなった。この地域において重力測定を行ない、詳しい重力異常を作成し、瀬戸内海およびその周辺の地学的特徴を明らかにすることが目的であった。 初年度においては、淡路島、小豆島、豊島、直島、本島など瀬戸内海東部のフェリ-によってアクセスできる島々と周辺の陸地(本州および四国)および大阪平野、六甲山脈、生駒山脈など瀬戸内海東端部においても測定を行なった. 本年度は,(1)神戸大学理学部臨海実験所研究船を用いて瀬戸内海中部および東部に散在する多数の無人島を含む40以上の島々を,(2)因島,弓削島,大三島,岩城島,大島など瀬戸内海中部の大きな島々を,また,(3)東京大学海洋研究所研究船による瀬戸内海全域の海域を,それぞれ重力測定した.(3)は船上重力計による測定である.(1)において,接岸できない島ではボ-トを漕いで上陸し,測定を行なった.さらに,(4)高松南部において詳しい重力測定を行なったが,これは本調査中に高松南部に顕著な円形状の低い重力異常分布が発見されたからである.これは日本における始めての隕石クレ-タ発見につながる可能性があるものである. これらの測定値のほか、新たに多数の公表および未公表の他機関による重力測定デ-タを入力、検査、編集し、既存デ-タと合せて大阪平野から別府にかけての詳細な重力異常図を作成した。これによって,別府湾から四国北部を経由して大阪湾に至る顕著な重力異常が低い帯が発見された.この低重力異常帯は概ね中央構造線の北縁と一致するが,重力異常図を見る限り,紀伊半島へは上陸せず大阪湾を経て琵琶湖の方へ延びてゆく様に見える.また,全国重力異常図を参照すると,西は雲仙岳から東は敦賀まで連続した低重力異常帯の存在が浮び上がってくる.したがって,この低重力異常帯の意義を中央構造線だけではなく新たな視点で解釈する必要がある.これを"雲仙ー敦賀低重力異常帯"あるいは"雲仙ー敦賀線"と名付けた.
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