研究概要 |
惑星形成過程において起こったとされる多くの微惑星の間での大規模な衝突破壊に関する問題の中でも,放出される破片群の速度分布はとくに基本的な量である.われわれはこれを理解するために,まず実験室内で模擬衝突実験を行い,これを大規模衝突に外挿していこうとしている.しかし破片の速度分布のデ-タがほとんど無いような状態であったので本研究では実験室内で小規模な衝突実験を行い,破片の速度分布のデ-タを系統的に出すことを試みた.実験では二段式軽ガス銃でナイロン小球(直径7mm)を2ー4km/sに加速して玄武岩および石膏などの球形タ-ゲットに衝突させ,破壊の様子を高速度カメラ,およびストロボを用いて撮影した.得られたフィルムを画像処理機にかけて解析し破片サイズ約1mmのものまで速度をきめた.このサイズ域での破片の速度は約100m/s以下で,破片群の重心系での速度を破片質量に対して表質した結果,どのタ-ゲットでも破片速度が破片の質量のー1/3〜ー1/6乗に比例すること,また速度の絶対的な大きさもタ-ゲットによってあまり差がなく,実験室規模での衝突では,破片質量を決めるとほぼ1桁以内の範囲で破片速度が決まることがわかった.一方,衝突で形成された小惑星の族の中の相対速度は実験室で得られた結果をそのまま小惑星サイズに外挿したときの速度よりはるかに大きいがこの差は衝突する粒子の大きさの違いに基づく衝撃波形の立上がり立下がり速度の違いを反映しているのではないかと推測された.破片の速度分布は衝突して発生する衝撃波の伝播状態,および破壊過程に深く関わっているので,その理解のため球などの有限サイズの物体上でのクレ-タ形成のメカニズムに関わる研究も行った.以上によって今後天体サイズの衝突現象を考える場合に必要となるスケ-リング則を考えて行くには,入射粒子の大きさをいろいろと変えて衝突実験を行うことが特に有効であるとの結論に達した.
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