研究概要 |
91年度に,横浜市立大学の広帯域地震計観測網(4地点)が稼動を開始し,地震波データが飛躍的に増大した。また,データ解析の手法においても大きな進展があり,いわゆる準リアルタイム解析が可能になった。本研究期間中,およそ80個の近地地震について波形のインバージョンを行い,断層メカニズム,地震モーメント(Mo),および,破壊継続時間(τ)を求めた。解析した地震のモーメントはMo=3×10^<20〜>9×10^<25>dyn.cmの範囲にわたる。 解析結果から得られる知見は以下の様である。 (1)MwとMnの整合性:モーメントマグニチュード(Mw)と防災科学技術研究所の微小地震観測網で決められるマグニチュードMnはバイアス無しで良く一致する。 (2)Moとτの関係:単発地震の多くは,第1近似的に,三角形型の震源時間関数で与えられることがわかった。またこの三角形の底辺τと地震モーメントMoとの間にはMo/τ^3=一定の関係が成りたつこと,右辺の一定値は深い地震で〜1×10^<24>dyn.cm/s^3浅い地震で〜1×10^<23>dyn.cm/s^3であることがわかった。一方,多くの場合,震源時間関数がほぼ等脚の三角形で与えられることから,三角形の初期勾配はMo〜τとなることがわかる。このことは,地震の大きさがかなり初期の段階で決まっていることを示唆している。 (3)Mo/τ^3の深さ依存性・地域依存性:(1)プレート境界地震とプレート内地震の間には応力降下の系統的な差はない。(2)浅発地震の応力降下は小さい。しかし深さ40km以深では,応力降下はほぼ一定であり,顕著な深さ依存性は認められない。(3)小田原近傍では周辺に比べて局所的な高い応力降下が認められる。
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