| 研究概要 |
対馬海峡から流入した対馬暖流が青森県西方沖から津軽海峡を通る津軽暖流と,北上して北海道西岸・宗谷海峡を通る宗谷暖流に分岐する際の流量の分配機構を,数値シミュレ-ションによる力学的理解や,観測およびデ-タ解析による実態把握などによって研究した.その結果,次のようなことがらが明らかになった.
数値シミュレ-ションによって,日本海は循環の季節変化が著しく,風応力の大きな冬季は風成循環が卓越し,風が弱まる夏季には海峡からの流入流出によって発生する循環が卓越していることを示した.また,青森県西方での対馬暖流の分岐については,流軸の東西の移動や海底地形を感じる度合によって流量の分配比率が決まっている傾向が示されたが,まだ確定的な結論を得に至っていない.
日本海区水産研究所との共同研究により,青森県西方沖および津軽海岐での海洋観測を実施した.それにより,水温・塩分の観測から間接的に求めた津軽暖流の流量は,ADCPによる直接測流の結果に一致することを実証した.また,海岐内の津軽暖流には明瞭な日周変動が観測され,それは下流方向への水位差によって駆動されていることを明らかにした.
過去の流量の観測値を沿岸水位と比較した結果,北上流は深浦ー松前の水位差に比例して変動しており,津軽暖流は松前ー函館の水位差に比例して変動していることが明らかになった.このことは北上流,津軽暖流を駆動しているものは,それぞれ南北,東西の水位差であることを意味している.従って,北上流と津軽暖流の流量の配分比率は,東西と南北の海南傾斜によって決まっていると結論される.何が青森県西方の海面水位を決めているのかは,今後の重要な研究課題である.
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