研究概要 |
1.励起状態で、分子内での嵩高い芳香族原子団のねじれ回転運動を伴って生成する「分子内励起錯体(IEC)状態」の生成は溶媒の粘性によって著しく影響を受けることが期待される。このような化学反応に対する溶媒の動力学的効果を定量的に研究する目的として、本研究課題ではまず対象として1.3ーDi(1ーpyrenyl)propane(DPP)の分子内エキシマ-状態の生成を選んだ。 2.粘度依存性の実験方法として高圧法を用いた。溶媒はMethylcyclohexane(MCH),iーButanol(iーBuOH),2,6,10,14ーTeramethylpentadecane(TMPD)の三種を用いた。高圧実験法では、これらの溶液について100cPにおよぶ粘度範囲を変えることが可能であることが伴った。 3.蛍光量子収量の測定によって、分子内エキシマ-状態の生成速度定数(κ)に対する溶媒粘度(η)依存性を決定した。この結果に対してKramers理論を適用、解析したところ、約5cP以上の粘度範囲ではこの理論による説明が可能であることが結論できた。 4.一方、同じ研究目的の下に3.3'ーDiethyloxadicarbocyanine Iodide(DODCI)の基底状態での光異性化反応について調べた結果、この系ではKramers理論で説明できないことが判った。粘性が溶媒振動に依存することを考慮したGroteーHynes理論が適用できることを見出した。 5.生成に伴うポテンシャル(DPP:15ー18kJ/mol.DODCI:59kJ/mol)が理論の可否を左右する大きな要因であることが結論された。
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