研究概要 |
室湿で冷間加工の後、種々の温度(100〜1000℃)で燒きなました合金,Pd_<1-x> Agx(X=0〜0.4),について希薄領域(2相)における水素吸収等温線(平衡水素圧-溶解量)を0〜75℃で測定した。得られたデ-タを解析し水素溶解のエンタルピ-(ΔH°),エントロピ-(ΔS°)および溶解水素原子間のエネルギ-(W_<HH>)等を求めた。冷間加工試料の示す水素溶解度は焼きなまし温度の上昇とともに減少した。この減少にはΔH°の変化の寄与が支配的であり,冷間加工試料中の水素原子間の引力は著しく小さいことが判明した。一方燒きなましにともなう冷間加工状態の回復(点状欠陥,転位の移動消滅,再結晶等)の過程を電気低抗,硬度,Xー線半値巾の測定により検討した。以上のデ-タをもとに冷間加工試料の示すα相における水素溶解度の増加は主として刄状転位のまわりの伸張応力場への水素の選択的吸収によるものと結論した。なお融点近傍の温度より急冷した試料(主として点状欠陥の生成)を用い,点状欠陥(空孔の溶解度増加への直接の寄与を否定した。α【double arrow】β相変化を与えた試料,X=0.05,(この処理によっても転位の生成が実証されている)についても同ようの実験を行った。この結果を冷間加工の場合と比較することにより、水素溶解の研究が格子欠陥のmonitorに有効な一手段になりうることがわかった。α相における水素溶解度におよぼす冷間加工の効果は合金における銀含量の増加とともに著しく減少した(X=0.4の試料では加工の解果はほとんど検出できなかった)。この事実は本研究で見出した興味ある結果の一つであるが,この理由については今後の研究にまたねばならない。
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