研究概要 |
固体の表面は,内部とは違って化学結合の切断された場所である。このような表面を多量にもつ微粒子の集合体である粉体は,それゆえにエネルギ-的にも非常に活性である。この粉体表面のエネルギ-特性は,粉体表面と吸着分子との相互作用エネルギ-,すなわち吸着熱から評価することができる。一方,金属酸化物のような粉体の表面には水の化学吸着によって生じた表面水酸基が存在しており,このものは高温真空引きしないと除去されないことから,固体表面のいろいろな特性に著しい影響を及ぼしていることが明らかにされつつある。本研究では,種々の金属酸化物粉体に対する水蒸気の吸着熱を,試作した吸着熱量計を用いて直接測定し,同時に測定した吸着等温線のデ-タとも合わせて微分吸着熱を求めて,金属酸化物粉体表面のエネルギ-的均一性・不均一性について評価した。その結果,本研究で用いた数種の金属酸化物粉体について,微分吸着熱を吸着量に対してプロットした吸着熱曲線において,微分吸着熱が吸着量の増加とともに単調に減少するものと,吸着着の一定値,すなわちプラト-を示すものの2つのグル-プに大別できることがわかった。前者のグル-プにはTiO_2をはじめとして,SiO_2,Al_2O_3,ZrO_2が含まれる。この場合,固体表面はエネルギ-的に不均一で,化学吸着エネルギ-と物理吸着エネルギ-との差が小さいことも特徴である。一方,後者のグル-プにはZnO,SnO_2,Cr_2O_3が属しており,表面のエネルギ-的な均一性が高く,化学吸着と物理吸着のエネルギ-差が大きいという特徴を有す。MgOは前二者の中間的なものであるが,どちらかと言えば均一性の高い方のグル-プに入ることがわかった。このようなエネルギ-的な均一・不均一性は,金属酸化物粉体の表面の構造と密接な関係にあることが,前処理条件をいろいろ変えたγーFe_2O_3およびNiOについての吸着熱デ-タから明らかにされた。
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