研究概要 |
希ガス正イオンとハロゲン負イオンとの中和再結合反応を研究するための新しい放電フロ-装置を開発し、二体、三体再結合反応によるエキシマ-の生成機構を検討した。試作した放電フロ-装置は、複数の試料導入口を有する反応セルを中心に、放電部、高速排気系、発光観測装置から構成した。希ガスの正イオン(Ar^+,Kr^+,Xe^+)は、ペニングイオン化で生成させ、一方、ハロゲン負イオンはハロゲン含有化合物とペニング電子との熱電子付着反応で生成させた。これらの反応で生成させた正負イオンの二体、三体中和再結合反応による希ガスハライドエキシマ-発光の観測に成功した。 Ar^+,Kr^+,Xe^++SF_6^ー→ArF^*,KrF^*,XeF^*+SF_5 (1) Ar^+,Kr^+,Xe^++Cl^ー+He→ArCl^*,KrCl^*,XeCl^*+He (2) 希ガスイオンの二つのスピンー軌道状態( ^2P_<1/2>、3/2)の一方の状態だけをフィルタ-ガスを用いて選別して反応させることにより、エキシマ-の電子状態選択性について検討した。その結果、 ^2P_<1/2>状態との反応では主としてD状態が、 ^2P_<3/2>状態の反応ではエキシマ-のB,C状態が、高速択的に生成することを発見した。この結果は中和再結合反応が断熱ポテンシャルからの予測通りに進行することを示した最初の例である。エキシマ-の生成速度のスピンー軌道状態依存性を調べ、 ^2P_<1/2>状態の反応の方がエキシマ-の生成速度が遅いのは、競争する前期解離速度が速いためであることを確認した。 エキシマ-生成の高いスピンー軌道選択性をHe_2^+/Kr,He_2^+/Xe電荷移動反応で生成するKr^+,Xe^+のスピンー軌道状態の生成分岐比の測定に応用し、二つの状態が ^2P_<1/2>: ^2P_<3/2>=1:2の統計比で生成することを見い出した。
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