研究概要 |
末端アルケニルボロン酸を酒石酸エステルまたはアミドなどのキラルなジオ-ルでエステル化することにより不斉修飾し,ついでシモンズ・スミス反応を行なうことにより,高いジアステレオ面区別性をもってシクロプロパン化できることを明らかにした。また,生成したシクロプロピルボロン酸誘導体は温和な条件下に酸化反応を行なうことにより光学活性なシクロプロパノ-ルへ変換できることを示した。他方,内部アルケニルボロン酸誘導体はシモンズ・スミス法および他のいくつかの方法を試みたが,スム-ズにシクロプロパン化されなかった。このことから,α位のアルキル側鎖が遷移状態で立体障害を生じることが示唆された。上で得られたシクロプロパノ-ルはシリルエ-テルとした後アセトキシ水銀化反応を行なうことにより,不斉炭素部分にさわることなく開環生成物へと導けることを確認した。さらに,この不斉シクロプロパン化反応で得られる光学活性シクロプロピルボロン酸誘導体は,酸化反応ばかりでなく有機ホウ素化合物に既知の多様な変換反応を使って様々な有用物質へと導くことができることは言うまでもないが,ここではその1つのデモンストレ-ションとして最も基本的なクロロメチルリチウムによる1炭素延長反応を行なった。その生成物を酸化処理することにより光学活性を失なうことなく対応するシクロプロピルメタノ-ル誘導体が得られたが,これはさらにオキシ水銀化反応に付すことによってレジオ選択的にまた立体特異的に開環しトレオー2ーメチル1,3ージオ-ルへと変換できることが知られている。したがって,この不斉シクロプロパン化反応は有機合成上有用なキラルシントンを調製するうえで広い応用の可能性をもつことが明らかにできたと思われる。
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