研究概要 |
非ベンゼン系芳香族化合物に関する研究のうち,大員環のみから成る三環性共役化合物〔14〕アヌレノ〔16〕アヌレノ〔14〕アヌレン(1)および交差共役化合物〔13〕〔15〕フルバレン誘導体(2)を合成し,それらの性質を検討する目的で研究を行なった。(1)の合成において,二環性フラン5,14ージメチルー1,3ービスデヒドロ〔14〕アヌレノ〔c〕フランの改良合成法の開発に成功し,(1)の重要な合成単位である5,14ージメチルー9,10ービス〔2'ー(1'ーホルミル1'ーエテニル)〕ー1,3ービスデヒドロ〔14〕アヌレンを安定に供給することができるようになった。このジホルミル体に対し,McMurryの条件TiCl_3ーLiAlH_4による還元的カップリング反応を試みたが,目的とする(1)を直接得ることはできなかった。また,ホルミル体を対応するホスホニウム塩に変換し,これとジホルミル体とのWittig反応により(1)へ導くことも試みたが,(1)の単離確認に成功してはいない。一方,(2)の合成は,〔B〕アヌレノンを基質とし,Wittig反応を繰返すことにより二重結合を順次導入して末端ジアセチレン体を得,これの分子内カップリング反応により行なった。(2)の電子吸収スペクトルは,比較化合物よりかなり長波長シフトし,周辺共役が更に広がったことを顕著に示した。しかしながら, ^1HNMRスペクトル測定結果から,中央二重結合の分極に基く共鳴構造,すなわち,いずれの環も14π電子系となる分極構造の寄与は観察されず,(2)はポリオレフィン性の高い交差共役系化合物であることがわかった。
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