研究概要 |
筆者は、ScCl_2を用いると、アリルアルコ-ル類によるパラジウム触媒カルボニルーアリル化反応が空気中、水系で円滑に進行することを見いだした。この反応でアリルアルコ-ル類はアリルアニオンのsynthonとして働いている。また、これはπーアリルパラジウム錯体の見かけ上の電荷の反転を利用したものである。この反応において、溶媒の選択により、高い化学、位置、およびジアステレオ選択性を達成することができた。ここでは、この方法論の機構や応用性を調べ、以下の点を明らかにした。1. ^1H, ^<13>H, ^<13>C,および ^<119>Sn NMRにより、無水系での実際のアリル化剤はアリルトリクロロスズである。この結果は、本反応がSnCl_2存在下、アリルアルコ-ルのPd(0)への酸化的付加、生成したπーアリルパラジウム遷体へのSnCl_2の挿入、続いてπーアリルパラジウムスタナ-トからの還元的脱離により進行することを示唆する。2.極性溶媒中でのキレ-ション制御によるジアステレオ選択を可能にした:(1)ωーヒドロキシカルボニル化合物のアリルスズのSn(IV)へのキレ-ション、(2)1ー置換2ーエトキシカルボニルー2ープロペニルスズのエトキシカルボニル基のSn(IV)へのキレ-ション、および(3)4ー置換4ーヒドロキシー2ープテニルスズのヒドロキシ基のSn(IV)へのキレ-ションを利用した。3.転位反応を経た分子内カルボニルーアリル化により五員還状アルコ-ルを合成した:(1)Claisenおよび(2)oxyーCope転位により分子内にホルミル基を持ったアリルアルコ-ルを生成し、それの分子内カルボニルーアリル化反応を行った。4.3ー置換アリルアルコ-ルによる非極性溶媒中での超音波促進カルボニルーアリル化反応により、極性溶媒中とは逆の位置選択性(αー選択性)を発現させた。
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