研究概要 |
我々はアルキルコバロキシムを用いて補酵素B_<12>のモデル化を試みてきた。そこではアルキルコバルト結合のラジカル開裂で生じるアルキルラジカルが隣接基の関与による転位を越すものである。 分子間のβ,γ位にーCOSR基を有するアルキルラジカルはR基を脱離して効率良くβーチオラクトンおよびγーチオラクトンを与える。またγー位に含イオウ基ーSCOR,ーSR,ーS(O)R等を有するアルキルラジカルはそれぞれーCORーR基を脱離して収率良くγーチオラクトン、環状スルフィド、スルホキシドを与える。これ等の反応はいづれもアルキルラジカルが分子内で含イオウ官能基のイオウを攻撃し、原子価拡大を伴ったスルフラニルラジカルを経て分子内SH_2反応を起したものである。チオエステルとの反応ではSーアルキル開裂、Sーアシル開裂のいづれも起り、分子内反応では立体因子が両者間の選択性を支配している。そこでRCOーSーArおよびArCOーSーRに対してネオペンチルコバロキシムから発生させた(CH_3)_3CCH_2を反応させると、いづれも収率良く(CH_3)_3CCH_2ーSAr,(CH_3)_3CCH_2SRを与えた。以上のことから立体規制を受けない場合は選択的にSーアシル開裂が起ることが明らかになった。さらにこれ等の反応でArとしてパラ置換フェニルチオエステル類を用いると電子吸引性基が反応を促進することが明らかとなった。したがって本ラジカル反応はイオウ原子上での求核的ラジカル置換反応である。 以上のラジカル置換反応にコバロキシム(II)錯体が関与するかどうかを検討するため、ジメチルグリオキシム配位子をジフェニルグリオキシムにして中心コバルトを遮蔽したり、グリオキシムの(ーOーHーOー)を(ーOーBF_2ーOー)としてイオウへの逆配位能を抑えた錯体を用いてチオエステルのイオウ上での反応を検討したところ、いづれの場合も反応は阻害され、コバルト(II)はイオウ上でのラジカル反応性を促進することが示された。コバルト(II)の関与の様式についてはなを検討が必要である。
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