研究概要 |
初年度においては,ジヒドロコンパクチンが持つ5つの不斉中心のうち9,11a,15,15a位の4箇所を整え,10ー11位間の二重結合をShapiro法によって導入した.最終年度では,初年度の結果にもとずき合成を進め,(+)ージヒドロコンパクチンの新しい合成法を確立した. アセチルシクロヘキセンとクロトン酸メチルとの二重マイケル反応を鍵反応として,デカリン部の基本骨格を構築した.この反応は立体選択的に進行した.10ー11位間の二重結合は新たにxanthateの熱分解法を用いた所,再現性よく導入する事ができた.残ったデカリン部8位の立体化学は,8位をホルミル基に変え塩基により安定系のエカトリアルへと異性化させ整えた.この8位のホルミル基からHornerーEmmons反応により炭素鎖を延ばし,数工程を経て光学分割により光学活性体を得た.生理活性を司っているラクトン部の構築は,TiCl_4存在下にアセト酢酸エステル等価体のアルド-ル反応を鍵反応として行われた.この反応には,遠隔不斉制御が認められた.反応後,syn選択的に還元によりセコ酸の立体化学を整え,最後にラクトン化して(+)ージヒドロコンパクチンの全合成を完了した.また,光学活性なアセチルシクロヘキセンの合成法,コンパクチンの持つジエン部の導入法を確立する事ができた.その結果,より一般性のある合成経路を開発することができ,コンパクチン類の合成という所期の目的を達成する事ができた.
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