研究概要 |
数種の有機試薬のジルコニウム(IV)錯体についてフッ化物イオンとの反応を検討した結果,セミキシレノ-ルオレンジを用いた系で有望な反応を見いだした.実際の定量に即して,条件(緩衝液の種類,pH,試薬濃度)の最適化を行った.この系の感度は現在広く用いられているランタンーアリザリンコンプレキソン系と同程度であるが,試薬ブランクが比較的低く,また瞬時に完結するという利点をもっている.フロ-インジェクション分析法を適用することによって,簡単で迅速なフッ化物イオンの分析法を確立することができた. この反応系およびすでにフッ化物イオンの蛍光定量法として定着しているジルコニウム(IV)ーカルセインブル-系についてイオン選択性電極を用いて溶液内の平衡を解析した.その結果,呈色反応はいずれも部分的に加水分解した親錯体がフッ化物イオンと反応してフッ化物イオンとの混合配位子錯体を生成する際に,発色団の金属イオンへの配位状況が変化するという,今までに知られていない機構によっていることを明らかにした.両配位子は実質的に同一の官能基を持っており,今後更に優れた有機試薬を開発していく上での指針をえた. 多座の配位子の側鎖が混合配位子錯体の安定性に大きな影響をおよぼすことが判明したので,構造の簡単なアミノポリカルボン酸のZr(IV)錯体について詳しい検討を行った.DTPAおよびDPTAの場合には,Zr(IV)と最もよく適合し混合配位子錯体は生成しない.一方,配位数の多いTTHAでは,MLはほとんどフッ化物と反応しないが,プロトン化したMHLはかなり高い親和性を示し,EDTAなどのML錯体に近い配位状態にある.3ーの電荷を持つHEDTAとの錯体MLは4ーのEDTAのML錯体よりかなり大きい生成定数を持っているが,アルコ-ル性水酸基が脱プロトンして生ずるMH_<ー1>LではEDTAなどのML錯体と同じ電荷にも関わらず著しく親和性が低い.
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