研究概要 |
昨年度に引き続き,非平衡オ-ディナリ・コンドライト(以下UOCと略記する)の分析を実施した。分析対象元素は熱的履歴を解明するうえで準発性の比較的高い元素とし,本研究では昨年度から継続してインジウム,亜鉛を選んだ。本年度はこれらに加えて銅の分析を実施した。 平衡凝縮理論に従うと,太陽系の元素組成をもったガス状の物貭からインジウム,亜鉛,銅は,450K,600K,900Kでそれぞれ固体に凝縮すると計算されている(ただしはじめの全圧を10^<-4>気圧と仮定する)。UOC中におけるこれら3元素の存在度を放射化学的中性子放射化分析で求めた。その結果,銅と亜鉛は隕石の種類(鉱物学的,化学的な分類上での)によらず,その含有量は80ppm,60ppm程度でほとんど一定であった。それに対してインジウムは数ppbから100ppbと,約2桁に及ぶ大きな変動のあることが見い出された。隕石中の元素存在度は,始原的隕石においては隕石形成時の諸過程により左右され,分化した隕石においては隕石形成後の母天体上での諸過程に左右されるものと考えられる。UOCに対して平衡オ-ディナリ・コンドライト(EOCと略記)なるグル-プが存在するが,EOC中においてもインジウム含有量は約2桁に及ぶ変動を示すが,その絶対量はUOCに比べて2桁小さい。EOCのインジウム含有量が母天体上での熱変成により大きな変動を受けたとすれば,UOCにおける変動が同様の原因とは考えにくい。恐らく母天体上でかなり不均一に存在していたことを充映するのであろう。もしそうであれば,母天体上でそれ程不均一に存在させた何らかの過程があったものと考えられる。母天体上での移動がないとすれば星雲中での不均一性を示すと理解される。この母天体上での過程によるのか,又は星雲中での不均一性を反映するものなのかは今後のさらなる研究により解かれるものと思われる。
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