研究概要 |
環境中に存在する微小粒子を採取し、大気粒子試料については不溶存成分と溶存成分を測定した。堆積物や海水懸濁物粒子は走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギ-分散型X線分析装置(EDS)に自動粒子形状解析装置(AIA)を組み合わせた粒子分析システムで行なった。 1.大気粒子試料は連続的に時間分割試料が捕集出来るステップサンプラ-を用い、分析システムに適したサンプリング条件を検討した。その結果、ヌクレポアフィルタ-(孔径1.0μm)を用い、吸引流量は1l/minで濾過することが最適であることがわかった。またハイボリュウムエアサプラ-を用い、札幌とウラジオストクで大気の連続採取を2年間行なった。1991年4月から5月にかけて60日間、これらの24時間毎の連続試料採取を行なった。 2.2回の研究航海において、日本海盆の水深3600mの観測点で表層堆積物試料と海底直上の海水を濾過して集めた懸濁物試料を得た。堆積物試料は試料を水中で懸濁させ、濾過したものを分析試料として調製した。 3.これらの試料はSEM観察と元素分析が可能な炭素蒸着コ-ティングを行なった。このシステムの分析精度は標準ガラスと標準岩石を用い、含まれている主要10元素についてそれぞれ公表値の1%以内の精度を得た。 4.大気粒子の粒子形状化学分析の結果から、大気中を浮遊している粒子はSiーAl,Si,Feをそれぞれ主成分とするものや特徴ある微量元素を含むものに分類が出来た。また粒径の変動は、昼に平均粒径が大きく、夜に小さくなるという変動が明らかになった。 5.堆積物の分析結果から、大気粒子とは異なり、MnやTiを多く含む粒子の分類が必要であった。粒径については粒子数300個の自動分析から平均粒径(Waddel Diameter)が3μm程度であった。しかし、ケイ藻等の細長い破片や生物起源の針状粒子にどのように処理すべきか検討の余地が残されている。 6.大気粒子の化学分析の結果から、極めて広範囲にわたって化石燃理の消費によって発生する微小粒子が拡散していることと、アジア大陸から運ばれてくる鉱物粒子の濃度ピ-クと対応するような硝酸、非海塩性硫酸塩粒子の濃度ピ-クが測定させた。これらの人為的汚染物質が自然現象である黄砂にともなって運ばれてくることが明らかになった。 7.堆積物試料については従来の数センチ単位の深さ別の分析法を、数ミリ単位の薄い層にわけて分析を行なった。その結果、鉄とマンガンの濃度変化が、数ミリ単位で異なる深さで見ることができた。マンガン団塊に共通する初期続成過程の微細構造が明らかになった。
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