研究概要 |
二価遷移金属イオンは非プロトン性溶媒中で、一連のモノ,ジ,トリおよびテトラハロゲノ錯体を生成し、その過程で金属イオンの配位構造が溶媒和錯体の八面体6配位構造からハロゲノ錯体の四面体4配位構造へ変化する。したがって,ある種の錯体では八面体と四面体構造が平衡で共存することが示唆された。構造異性体があれば、その平衡は温度依存性を示す。本研究では、二価遷移金属イオンのハロゲノ錯体の生成反応を,独自に開発した精密な反応熱測定システムおよび分光光度滴定システムを用いて研究し金属錯体の生成の熱力学的パラメ-タや電子スペクトルの温度依存性を詳しく検討した。 ジメチルアセトアミド中でニッケル(II)のクロロ錯体の生成のエンタルピ-及びエントロピ-は著しい温度依存性を示した。電子スペクトルからモノクロロ錯体に5配位と6配位構造が、またジクロロ錯体は5配位と4配位構造が平衡で存在していることが判明した。また、ジメチルアセトアミド中の亜鉛(II)ハロゲノ錯体においても特異な反応性が見いだされた。熱力学的パラメ-タから、亜鉛(II)イオンは他の金属イオンとちがって配位数が6から減少していることが示唆された。実際EXAFSによる構造解析の結果、配位数は4.6であることが確認され、亜鉛(II)のDMA溶媒和錯体は八面体と四面体が平衡で共存していることが結論できた。 一方、ニッケル(II)のdtp錯体は4つのS原子が配位した底スピン錯体であり、Nドナ-と反応し、5および6配位のアダクトを生成する。6配位ニッケル(II)イオンは高スピンであるが、5配位錯体のスピン状態はNドナ-の性質に依存する。スピン変化と反応性の係りについて、研究をおこなった。現在スピン変化がない銅(II)、亜鉛(II)錯体について研究を進めており、今後、これらとの比較検討を行っていく予定である。
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