研究概要 |
配位子場の角重なり模型が、1種類だけの配位子をもつ錯体における配位構造の研究に適することを利用して、MLn(n=2-7)型錯体の配位構造に関する系統的研究を行い、併せて他の方法では説明困難な構造を解明した。 1.MLnをM_<n+>(L-)nとみなしたときの中心イオンM_<n+>の電子配置と錯体または分子の形との関連について論じ、実在の構造と一致する結果を得た。特に注目すべき結果は以下の通りである。 2.2配位構造については、54.74゚ー180゚の結合角が可能であることを示し,中心イオンの各軌道の結合への寄与の割合と結合角との関係を明らかにした。また中心イオンM_<2+>が閉殻または18電子殻をもつML_2分子のうち、BaX_2(X=F,Cl,Br,I)およびSrF_2,SrCl_2,CaF_2が予想に反して折線状になるという事実を、軌道のエネルギー準位および軌道間相互作用の大きさを考慮した(局在分子軌道的な)拡張角重なり模型により解明した。 3.3配位構造では、特に中心イオンがs^2p^2配置をもつClF_3などのT字型分子の形について詳しく論じ、結合角が90°より小さくなることを示した。 4.4配位構造に関しては、特に中心イオンがs^2配置をもつSF_4などの分子の形について詳しく論じ,すべての配位子がxy面に関して同じ側に偏って存在する特異な形が安定であることを示した。 5.5配位構造における中心イオンの電子配置と錯体の形との関連について論じ、中心イオンが閉殻あるいはd^8配置のときには三方両錐と正方錐の両型が可能であり、s^2配置では正方錐型になり中心原子は底面の下へとび出した形が安定であることを示した。また同一錯体中の2種の結合距離の長短についても論じた。 6.6配位構造では正八面体,ついで正三方柱が、7配位構造では五方両錐型が安定であることを示した。
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