研究概要 |
本研究で「新しい金属錯体ポリマ-の実現」に注目し、単に金属塩と配位子を混ぜて得るのではなく、多核錯体(あるいは金属クラスタ-)を目的意識的に連結する合成を見いだした。以下筒条書きにてその結果を述べる。 1.階段型無限連鎖銅錯体ポリマ-の合成・チオクロ-ム(tc)を用いて2核銅(I)構造を基本単位とする銅錯体ポリマ-,{[Cu_2(tc)_2](PF_6)_2]}_nの合成をおこない単結晶を得る事に成功した。この単結晶X線構造解析から、2つの銅にtcが2個橋掛け配位した平面型2核体を繰り返し単位とする構造を持つことを示した。このユニットはtcのOH基を使って隣のユニットと連結され、階段のステップに相当する構造となっている。興味あることには報告者がすでに明らかにした[Cu_2(1,8ーnaphthyridine)_2]^<2+>のCu…Cu間距離よりもさらに短い。この階段型無限連鎖銅錯体ポリマ-は極めて珍しくこれまでこの種のものが合成された例は無い。 2.4核銅クラスタ-を単位とするポリマ-単結晶の構築・ピラジン(prz)を多核錯体の連結配位子として用い、銅ー2ーメチルピリダジン(mpz)二核単位をつないだ無限連鎖1次元ポリマ-の単結晶の合成に成功した。{[Cu_2(mpz)_2(prz)_2](PF_6)_2}この構造は極めて珍しく、その特徴は(1)ジグザグ構造を持ち、(2)その中に歪んだ3配位、4配位の立体構造を持つ非等価な銅(I)が二種存在し、さらにこれまでにない(3)銅(I)ーmpzの4核を単位とする銅(I)ポリマ-となっている。そしてこの構造の実現にmpzのメチル基の立体反発が重要な役割をしているという、ポリマ-構造設計に有用な知見を得た。これまで得られている銅(I)ポリマ-は簡単な配位子(ハライドアニオン、CN^ー、SCN^ー等)を用いたものが殆どであるが、本研究ではπ型の縮合環配位子を使った点で、今後各種の構造のポリマ-を合成する上で重要な知見を得た。
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