研究概要 |
1。 女王と職蟻の産卵能力のちがい,女王による産卵制御の程度などの基礎資料として,その指標となる卵巣小管数と卵サイズを,日本産各種について調査した。A)卵巣小管数:62種の資料から職蟻の管数が産卵抑制の程度を知るうえで重要であった。女王と同数のもの,管数1のもの,卵巣を欠如するもの,の3群に大別され,亜料によりこれらの分布に特徴があった。B)卵サイズ:38種の資料から大卵,中卵,小卵の3種群に大別でき,卵サイズは卵巣小管数と強に相関をもっていた。C)卵巣小管の調査に付随しておこなったマルピギー氏管数の調査は,雄の資料をも加えることにより,従来職蟻にかぎられていた知見を越えたものとなった。マルピギー氏管数からみるとフタフシアリ亜科は特殊な亜科である。 2。 卵をめぐるコロニー構成員間の諸関係を飼育により明らかにした。健全な卵にたいする食卵と栄養卵の産下のふたつの局面がどういった種にみられるかに重点をおいた。ハリアリ類の食卵:メクラハリアリ,ノコギリハリアリでは女王の生む繁殖卵が,初令幼虫の栄養源となる。オオハリアリの職蟻は卵巣を欠如するが多雌の場合やはり健全な卵が幼虫の栄養源となるようである。トゲオオハリアリ 上位の順位の職蟻の生む雄卵が女王により消費され,栄養源として重要であるのみならず,雄アリ生産を抑制していた。 ケアリ類の栄養卵:コロニー創成期の女王自身が繁殖卵栄養卵の両者の産下を制御可能であるのが特徴であった。 フタフシアリ類の栄養卵:卵巣欠如職蟻とそうでない種のいずれにも栄養卵産下型の女王がいる。いずれも女王の卵巣小管数が多い種だが,制御の程度を実験的に確認するにはいたらなかった。
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