研究概要 |
黄化組繊が光を受けるとクロロフィル(Chl)の合成がはじまる。Chlの前駆体である5-アミノレブリン酸(ALA)の合成が光によって誘導されたプロトクロロフィライド(Pchlide)が合成される。Pchlideは還元されてクロロフィライド(Chlide)aになり,その後フィトールとエステル結合を行ないChlaが合成される。一方,P700-Chlaタンパク質複合体(CP1)や光化学系IIのChlaタンパク質複合体(CP43,CP47)などのアポタンパク質は葉緑体ゲノムにコードされ,膜結合型リボソームで合成される。光化学系IおよびIIの集光性Chla/bタンパク質複合体(LHCI,LHCII)は核ゲノムにコードされ,細胞質で合成された後葉緑体に運ばれる。新しく合成されたChlaはCP1やCP43,CP47などのアポタンパク質に,ChlbはChlaとともにLHCIやLHCIIに取り込まれる。CPの形成過程において,一方の供給が過剰なため,遊離のChl,またはChlと結合としていないアポタンパク質が多量に蓄積することがあれば,葉緑体は正常な発達ができない。このため,チラコイド膜上のChlとアポタンパク質の量比は一定に保たれなくてはならない。この機構を調べることを目標に,以下の点を明らかにした。(1)Chlのアポタンパク質への取り込まれ方の様式には,合成されたばかりのChlの分配と,一度アポタンパク質に取り込まれたChlの再分配がある。(2)異なるアポタンパク質とChl間には異なるアフィニティーがあり,Chlの供給量が少ない場合は,Chlはアフィニティーの高いCP1やCP43,CP47のアポタンパク質に優占的に取り込まれる。(3)プロテアーゼによるアボタンパク質の分解がChlとアボタンパク質の量比調節に重要な役割を担っている。
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