研究概要 |
我々はセルロ-ス含量の極めて低く、かつ折れやすいオオムギ突然変異体を見いだした。しかしセルロ-スの少ない理由について全くわかっていなかった.正確なセルロ-ス含量を定量するためにはヘミセルロ-ス含量に混入しているリグニンを取り除き、かつセルロ-スの分子量を低下させない加水分解法を考案した。さらにセルロ-スをカトキセンに溶解させ、分子量を定量したところ、折れやすいオオムギと、折れにくいオオムギも両方とも重合度は等しく、約1,000であった.このことから考えてセルロ-スの分子量は正常型と、折れやすい型も等しいが、セルロ-スの本数は1/5から1/6しかないことがわかり、折れやすいオオムギはセルロ-スの合成を減少させるが、長さには無関係であることがわかった.この折れやすいオオムギを走査電子顕微鏡で観察すると、稈のどの細胞壁も薄いことが判明した.なおセルロ-ス突然変異体はリグニン,ペクチン,ヘミセルロ-ス量には全く関係がなかった。 折れやすいオオムギの中で、fs_3遺伝子をもつ突然変異体はfs_2よりも若い時期に発現することから、折れやすい遺伝子はセルロ-ス合成遺伝子の上流域でセルロ-ス合成の本数を支配していることが考えられる。さらに本研究の応用としてセルロ-ス含量の少ない植物は家畜に食べさせたとき、嫌気的なメタンガス発酵が低下すると考えられる。現在地球温暖化が環境問題の重要な課題となっているとき、セルロ-スレス突然変異遺伝子をもった牧草を作ることは、地球温暖化を防ぐ近道であると考えられる。このような遺伝子をHordeum bulbosumのような球根をもった植物に遺伝子導入することにより、提案したようなことが実現可能なものとなると考えられる
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