研究概要 |
本研究では光形態形成における細胞骨格変化をシダ原糸体を用いて調べ、次の結果を得た。 1。シダ原糸体は先端成長を示し,先端部には微小管およびマイクロフイラメントのリング構造が存在する。青色光誘導先端膨潤,フィトクロム依存光屈性反応時のこれらリング構造の変化を二重染色法により調べた。(1)青色光誘導先端部膨潤 先端部膨潤は光照射開始後2時間目以降に明きらかとなることがこれに先立ち両リング構造とも消失し,照射開始2時間目でほとんどの原糸体で見られなくなることがわかった。消失のタイミングはマイクロフイラメントの方がわずかに先行するとおもわれた。(2)フィトクロム依存光屈性 屈曲反応は2時間目以降で明きらかとなり,これに先立ち両リング構造ともリングの傾斜化,一時的消失が見られる。傾斜化、一時的消失のタイミングはともにマイクロフイラメントの方が微小管に先立つことがわかった。 2。原糸体細胞はフィトクロム依存,青色光吸収色素依存の葉緑体光定位運動を示す。弱光定位反応を誘導した葉緑体の周緑部には,暗所には見られないリング状のマイクロフイラメントが形成されることを見いだしている。微小管の構造に変化はみられない。微光束の部分照射により弱光および強光の定位反応を誘導し,リング状マイクロフイラメントの形成を調べた。(1)弱光反応 赤色光、青色光ともに、周緑部のリング状マイクロフイラメントは葉緑体が照射部位へ集まった後に形成され、暗所に移して葉緑体が分散する以前に消失する。(2)強青色光反応 リング状構造は出現し,弱光反応と同様な経過を示す。(3)強赤色光反応 この場合にはリング状構造は形成されない。 以上のように、いづれの光反応においてもマイクロフイラメントの構造変化が見られ、細胞骨格のうち、マイクロフイラメント構造が光形態形成に重要な役割を負っていることがわかった。
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