未受精卵が単為発生をする膜翅目昆虫を用いて、卵成熟過程についてまた成熟未受精卵の卵核活性について実験を行い、次の結果を得た。 1、カブラハバチ(広腰亜目、ハバチ科)卵黄蛋白質(ビテリン)と抗原共通性をもつが、分子量によって識別できるビテリンをもつArgenigrinodosa(広腰亜目、ミフシハバチ科)の雌に、カブラハバチの卵黄蓄積前の未成熟卵巣を移植したところ、nigrinodosaビテリンのみの蓄積がみられた。卵の成熟は現在のところ認められないが、ホルモン投与実験等さらに検討する予定である。本実験条件下では、卵巣における卵黄蛋白質合成はないと結論される。 2、カブラハバチ雌脂肪体を調べたところ、抗Lおよび抗Sビテリン抗体にともに反応し、分子量が(L+S)に相当する蛋白質が検出された。すなわち、ビテリン前駆体は1本のポリペプチドとして合成された後、分断されて2本となると思われる。 3、カブラハバチのビテリンLとSとに対するポリクロ-ン抗体を用いて、広く膜翅目全般(2亜目、8上科、11科、31属、42種)におけるビテリン抗原共通性を調べた。その結果、科を越えると共通性が失われるという鱗翅目におけるこれまでの結果と異なり、膜翅目では、科はもちろん、亜目を越えて広く共通性が保存されていることが分かった。また、分子量にかなりの変異が存在することが分かった。 4、人為的に注入された精子は、受精しない限り発生に参加できない(キメラができない)ことが分かっている。精子核の発生参加を誘導する試みを続けている。成熟未受精卵の卵核は40℃、10分の熱処理でほぼ完全に不活性化できることが分かった。
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