研究概要 |
バテイラ〓の一種,バテイラの卵黄膜ライシンは塩基性の分子量13,800の単鎖ポリペプチドで,この全アミノ酸配列はEdman法によって手法で決められている(1986)。又,ライシンの卵黄膜溶解作用は、自種の卵黄膜に対してのみ有効であることが知られている(1971)。 同じバテイラ〓のコシダカガンガラとクボガイの精巣から卵黄膜ライシンを精製し,その性質を比較したところ,3種のライシンとも分子量約15,000,等電点10.5とよく一致している上に非常に近いアミノ酸組成を示した。又,抗バテイラライシン抗体は他の2種のライシンとも交叉反応することが明らかとなった。Staphylococcus aureus V8プロテア-ゼ消化ペプチドのマッピングと抗体との反応性よりNー末端ペプチド(50残基)とCー末端ペプチド(28残基)が非常によく一致していると考えられる。 更に,これらライシンのシ-クエンサ-を用いたアミノ酸配列の決定が試みられ,予備的なデ-タではこれら3種のライシンの約90%の配列が一致していると思われる。 又,卵黄膜ライシンの分子生物学的研究を進めて行く足掛りとして,バテイラライシンのcDNAのクロ-ニングを行なった。λgtllファ-ジをベクタ-としたバテイラ精巣cDNA発現ライブラリ-を抗体でスクリ-ニングする方法を用いた。約650bpのcDNAクロ-ン(λcLysー1)を分離し,塩基配列の分析を行なった。λcLysー1は全長648bpで,このATGよりはじまるアミノ酸162個から成るオ-プンリ-ディングフレ-ムを持っていて,3^´末端にはpolyA鎖が存在し,その23bp上流にpolyA付加シグナルAATAAAが存在する。又,5^´末端には22個のアミノ酸より成るシグナルペプチドの存在も認められた。
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