研究概要 |
アクチビンA(=EDF)が未分化細胞の予定外胚葉に対して中胚葉分化誘導するということを私が世界で初めて発表したが,これによって中胚葉分化誘導因子の最も有力な物質として,私が見つけたアクチビンが認知された成果は極めて大きい。 アクチビンAを未分化な予定外胚葉細胞に与えると低温度では腹側の血球様細胞,中濃度で筋肉と神経組織,高濃度で脊索を分化誘導する。アクチビンの濃度依存によって細胞分化の質を変化させて,試験管の中ですべての中胚葉を分化誘導することができた。この時,アクチビンAは未分化な細胞に対して単に形態学的な変化をひきおこすだけでなく,遺伝子レベルの発現においても正常胚と同じように活性化していることをαーアクチンやNーCAMのプロ-ブを用してノ-ザン法によって証明された。アクチビンが正常卵や胚の中に存在するかどうかを調べるためにツメガエルの約2000個の未受精卵と胞胚を別々に集めて抽出・精製・分離を行った。その結果,世界で初めて未受精卵中にすでにタンパク質の状態でアクチビンが存在することがわかった。またアクチビン結合タンパク質としてフォリスタチンを用いてアクチビンの中胚葉分化誘導活性を抑制できるかどうかを調べた。その結果,アクチビンとフォリスタチンの重量比にして1:4ぐらいで分化誘導活性が著しく抑制されることがわかった。また私達はアクチビンAの他にアクチビンB,ABの3種のアクチビンタンパク質の単離に成功した。特にアクチビンBをタンパク質としては世界で初めてである。中胚葉分化誘導能に関しては3種のアクチビンによって,それほどの差はなく,濃度依存的にきれいに細胞分化の質を腹側から背側へと変化させてゆくことがわかった。またアクチビンA,Bおよびフォリスタチンの抗体の作成にも成功した。
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