研究概要 |
1.アンドロゲンにより活性化された尿生殖洞間充織の解析 16日ラット胎児の尿生殖洞を,DHT存在下,非存在下において器官培養したのち,上皮と間充織を単離する。DHTは間充織にとりこまれ,上皮にはとりこまれない。このさい,DHT処理間充織に特異的に出現するタンパクを,HPLC法およびSDSーPAGE法により解析した。その結果,DHT処理により消失するタンパクが4こあり,逆に,出現するタンパクが5こあることがわかった。また,それぞれの分子量も推定できた。この研究により,アンドロゲンは,胎児の尿生殖洞では,その間充織にとりこまれて,活性化させ,そのときにおきる変化がタンパクレベルで確認された。前者は前立腺形成のインヒビタ-,後者は前立腺形成の誘導または促進に関係する可能性があり,現在それらの特性を追求しつつある。 2.尿生殖洞間充織の部域特異性の解析 成体ラット前立腺は腹側と背側に別箇の腺葉を形成し,それぞれの上皮が分泌するタンパクなどに違いがある。この腺葉上皮の部域特異的分化に,尿生殖洞間充織が決定的役割を演じていることがmRNAの検出によって明らかにされた。すなわち,尿生殖洞を腹側と背側に分け,さらにおのおのより上皮と間充織を分離する。上皮と間充織を交換して培養すると,背側上皮であっても,間充織が腹側由来であれば,腹側前立腺に特異的な前立腺ステロイド結合タンパクPSBPのC1サブユニット遺伝子の転写が起こるが,腹側上皮でも,間充織が背側由来のときには,腹側上皮特異的遺伝子の転写は見られない。これらの結果は,尿生殖洞間充織に前立腺の部域性を決定する因子があることを示すものである。 本研究は前立腺誘導因子の同定を目指しており,本年度の研究により大きな前進があった。
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