研究概要 |
ブタゴナドトロピン遺伝子(α鎖,FSHβ鎖およびLHβ鎖)のクロ-ニングを行い,全エクソンを含む塩基配列を決定した.各遺伝子のコ-ディング領域はウシやヒトで知られているものと同じ位置で介在配列(イントロン)により分断されていた。また、発現を調節すると思われる遺伝子上の配列を検索すると、5'上流には、cAMPーresponsive element(CRE)に類似の配列がそれぞれ1箇所づつ見いだされた。そのほか、プロテインキナ-ゼCあるいはAを介する情報伝達系の応答配列であるAP1ーおよびAP2ーresponsive element(AP1、AP2)、転写を促進する配列GCーboxやCACCCーboxなどが存在した。この事実は、ゴナドトロピンのサブユニット遺伝子の発現が、必ずしも同調していないというこれまでの結果を支持する。 また、遺伝子断片に対する結合因子の解析実験では、下垂体前葉組織の核タンパク質画分に、CRE、AP1、AP2の各配列に結合する因子が核抽出物中に存在しすることが判明した。これらの結合は、他の塩基配列による結合阻害が認められず特異的な核内因子との結合と判断した。また、ブタゴナドトロピン遺伝子の5'上流断片を用いた、競合実験では、いずれの場合でも結合の阻害が認められ、遺伝子断片上に核内因子が結合しうることが判明した。 これまでの実験で核内因子との結合が確認できたα鎖遺伝子の一部の配列を化学合成し、動物細胞発現ベクタ-であるpTKGHに組み込み、ブタ前葉細胞の初代培養細胞への遺伝子導入を行った。プロテインキナ-ゼCを活性化するGnRHおよびTPA、あるいはcAMPのレベルを上げるforskolinを用いて、導入された合成配列が遺伝子の転写レベルにどの程度影響するかを調べた。その結果、確かに組み込んだα鎖遺伝子上のCREとAP1は、2箇所ともプロテインキナ-ゼCとcAMPの情報伝達系の変動に応じて、転写レベルを上昇させることが判明した。 以上のごとく、ホルモン遺伝子の発現調節に係わる因子の解析が進んだ。
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