研究概要 |
1.心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP) (1) ^<125>IーANPをメダカの腹腔内に注射し,その結合部位をオ-トラジオグラフで調べたところ,ANPは鰓に特異的に結合した。ANPは魚では鰓に働いて水電解質代謝を調節している可能性がある。(2)脊椎動物各鋼の動物において,ANPとBNPは心房および心室筋細胞の分泌顆粒中に共存していることを免疫電顕二重ラベル法で明らかにした。ANPとBNPは同時に分泌され,協同して働く可能性がある。(3)ANPはウズラの飲水行動を促進することがわかっているが,BNPも促進することをみた。 2.エンドセリン(ET) (1)血管平滑筋を弛緩させるANPやBNPとは逆に,これを収縮させるペプチド,ETが1988年に発見されたが,本研究では脊椎動物各鋼の血液および視床下部ー下垂体系にET免疫活性が存在することを見出した。(2)ラット神経葉の軸索内のヴァソプレッシン顆粒およびオキシトシン顆粒にETが存在することを見出した。ETが後葉ホルモンと共に血中に分泌され,協同して働くのか,あるいはETが後葉ホルモンの分泌に対し何らかの影響を及ぼすのか興味深い。(3)板鰓類および硬骨魚の尾部下垂体系のニュ-ロンでは,ウロテンシンIIとETの共存が見られた。この生物学的意味は現在不明である。 以上,本研究はANP,BNP,ETに関する基礎的研究である。今後,この研究を土台にして水電解質代謝や血圧の調節機構について,ヴァソプレシン,アンギオテンシンIIなども含めて,それらペプチドの,脳および末梢の器官における機能的相関を調べたい。
|