研究概要 |
本研究の結果明らかになった白亜紀関門層群の細粒堆積物の鉱物組成と化学組成の特徴は以下のとおりである。 鉱物組成:砕屑粒は石英,長石類,流紋岩〜デ-サイト質および安山岩質火山岩類,および赤色化した頁岩である.一般に長石は著るしい炭酸塩化を受けている.マトリックスはイライト,イライト/スメクタイト,“緑泥石",赤鉄鉱,ゲ-サイト,黄鉄鉱が主であり,スメクタイトは稀である.イライトーイライト/スメクタイト系が最も普遍的で,層準・岩種にかかわらず出現する.炭酸塩セメントは最も特徴的で,シリカセメントは寧ろ稀である.炭酸塩はX線的に方解石,苦灰石,菱鉄鉱などが同定されている.また,熱水変質作用を受けたものは,石英,緑泥石,絹雲母,方解石,苦灰石,緑レン石,黄鉄鉱,まれにカリ長石,石膏などが生成しており,プロピライト相にあたる. 化学組合:基盤のジュラ紀豊浦層群に比べるといずれの成分も広い領域にわたる.SiO_2/Al_2O_3の頻度(%)分布パタ-ンは火砕岩のそれと酷似しており,火砕岩からの寄与が大きいことを示唆する.珪質生物遺骸からの寄与は殆んどみられない.Fe_2O_3/Al_2O_3は広い領域に分散しており,玄武岩の平均値を大きく超えるものがあり,特に関門層群の特徴岩種である赤紫岩頁岩において著るしい.MnO/Al_2O_3,MgO/Al_2O_3,CaO/Al_2O_3はよく似た頻度(%)分布パタ-ンを示し,極端に小さいものと大きいものが存在しており堆積後に成分移動があったことを示唆する.TiO_2/Al_2O_3とK_2O/Al_2O_3は層準や岩種にかかわらずほとんど一定の領域内にある. 赤紫岩頁岩と灰色〜黒色頁岩の差はFe_2O_3含有量にあるのではなく,主成分鉄鉱物が前者は赤鉄鉱,後者は黄鉄鉱であることによる.MnO,MgO,CaOは主として炭酸塩セメントとして固定されている。
|