研究概要 |
三郡変成岩は高圧・低温型の変成岩で,日本列島の形成史を明らかにする上で重要であるにもかかわらず,その地質構造についてはほとんど調べられていなかった.この研究では,顕微鏡スケ-ルの構造がサンプルサイズの構造とどの様に対応できるかということに主眼をおいて,変形構造の記載を行ってきた.その結果,以下のことが明らかになった.1.三郡変成岩は中国・九州のどの地域においても重複変形を受けている.顕微鏡下では,形成時期の異なる3回の褶曲が重ね合わさっている.1回目の褶曲(F1)は片理(S1)を褶曲軸面とする両翼の閉じた褶曲である.2回目の褶曲(F2)は片理を曲げる閉じた褶曲であり,ちりめんじわへき開(S2)を伴うものである.3回目の褶曲(F3)は2回目の褶曲軸面を曲げる開いた褶曲であり,軸面へき開としてちりめんじわへき開(S3)を伴う.それぞれの変形に応じて線構造も形成されているが,3回目の褶曲軸に起因した線構造が最も顕著に発達している.2.上記の小構造と対応して,地質図の上でも落合ー旭地域,徳山市須万地域および久留米地域でみられるように褶曲の重ね合わせを認めることができる.ただし,地質図の上では上記の3回の褶曲の上にさらに東西方向の褶曲が重ね合わさっている.この東西方向の褶曲は数kmの波長をもつ緩やかな褶曲である.また,地域によっては,さらに南北方向の褶曲を認めることもできる.3.2回目の褶曲の褶曲軸やそれに伴うちりめんじわへき開(S2)の走向は東北東ー西南西から東南東ー西北西を向く地域が多いが,徳山市川曲地域におけるようにほぼ南北を向く所もある.これは東西方向の大きな褶曲に起因したものだと考えられる.3回目の褶曲の褶曲軸はほぼ南北を向くものから西北西ー東南東を向くものまである.
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