研究概要 |
中期更新世になって,四国を含む西南日本弧は,著しい曲隆運動を受けた.それは古典的な意味での造山運動に匹敵するするというのが本研究の成果である.以下には事実を挙げて説明する. 西南日本弧には,2ー1Maの以前までは,唐ノ浜層群や大阪層群などに代表される海成層が広域に分布することから,この島弧は全般的に低地であった.それが,現在の石鎚山(標高1982m)に示されるようなに,四国山地は2000mもの高さに隆起した. 四国山地の隆起の結果,山麓部には万万層・城山層などの赤色礫・「クサリ礫」が堆積し,一方,海岸部には以布利層・芸西層群などの扇状地礫層・河川性砂礫層が堆積した.また,土佐湾の陸棚堆積盆や前弧海盆には1000mに達する竜王層群の砂泥互層が堆積した.これらはすべて四国山地が隆起した結果もたらされたモラッセ性堆積物であり,上から順に,赤色モラッセ・礫質モラッセ・海成モラッセとなる. モラッセ性堆積物は造山運動に伴う堆積物と言う意味において,四国山地を隆起させた海岸山脈形成論を述べると,次のようになる. 四国山地の隆起は約1Ma以降に,フィリッピン海プレ-トの新しい沈み込運動の開始によって,リソスフェアの摩擦が増大したことにより形成された.その変形は佐藤・松市(1988)のディスロケイションモデルによって説明される.海岸山脈は新しい沈み込作用の時にみに形成されることから,全世界的なマントル対流に対応しており,この1Ma以降の時期はHawaii episodeと呼ばれている(Vogt,1981).この時期には,ニュ-ジ-ランドや台湾などの海岸山脈も一斉に隆起したのである.
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