研究概要 |
琉球大学理学部海洋学科および地質調査所海洋地質部保存の堆積物試料・海底写真を用いて、沖縄島近海のサンゴモ球の分布・被度・種組成について検討した。生体の無節サンゴモと有孔虫Acervulina inhaerensに被覆されたサンゴモ球は、水深135m以浅に分布する。全体を概観すると、水深100mまでサンゴモの優占するサンゴモ球があり、そこから120mまでの漸移帯をへて120〜135mの範囲にA.inhaerens優占帯があるように見える。直径3cm以上のサンゴモ球の底質全体に対する被度は最大約80%のところから10%以下のところまで、被度は様々であるが、水深と被度に相関は見られない。慶良間諸島南方の孤立した堆・沖縄島南方の陸棚縁辺部・渡名喜島南側に広いサンゴモ球密集部がある。金武湾・本部半島北側・名護湾といった遮蔽された海域では、サンゴモ球はほとんど見られない。これらの陸棚上に分布するサンゴモ球上には、少なくとも27種の無節サンゴモが生育している。これらはSpongites,Lithoporetla,Lithophyllum,Mesophyllum,Lithothamnionの5属に含められる。このうちLithothamnionは最も種多様性が高く、11種を記録した。今回検討した陸棚上のサンゴモ球の内部の遺骸群集には、琉球列島のサンゴ礁の礁斜面上部のサンゴモ群集を特徴づける種を見い出していない。これらのサンゴモ球表面に見られる無節サンゴモ-A.inhaerens群集は同一であると判断される。 石垣島川平湾口にみられるLithophyllum pallescensは、琉球列島のサンゴモの中では最大種である。この種について現地の水槽で一次生産量と石灰化量の測定を行い、1日の純生産:石灰化のモル比が、約1:0.9という結果を得た。
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