研究概要 |
宇宙組成および星間雲組成の氷の温度上昇、紫外線照射による変成作用を実験的に明らかにし、それをもとに彗星の起源を議論するのが本研究の目的である。本年度は以下の研究を行った。 1現有の氷の凝縮・蒸発実験装置に設備備品費で購入した超高真空ゲ-トバルブを取り付け、真空排気系の性能を改善し、以下の実験を行った。 2H_2O,CO_2,CH_4,COを含んだ氷の蒸発過程を質量分析法、電子線回折法で詳細に調べた。10Kで凝縮した氷はアモルファスH_2O(aーH_2O),aーCO_2,aーCH_4,aーCOの混合物であり、CO量の1/3とCO_2量の1/2はaーH_2O表面に吸着している。残りのCOとCH_4はaーCO_2およびaーH_2O中に不純物として含まれる。この氷は加熱した場合、COは10の異なる温度領域で複雑に蒸発する。CO_2中にとり込まれていたCOやCH_4は50〜90Kで蒸発し、その蒸発量は10KでのCO_2/H_2Oに比例する。45KにおけるCO/H_2Oは0.07〜0.13で、H_2OーCO氷の場合の0.01〜0.04よりかなり大きい。したがって、これまでの平衡蒸発モデルやH_2OーCO氷の蒸発実験をもとに彗星の形成領域を推定するのは正しくないことがわかった。 3氷結晶への紫外線照射による変成を2と同様な方法で調べ、70K以下では氷結晶が紫外線によりアモルファス化することを見い出した。また、アモルファス氷中での氷結晶の核生成を理論的に考察することによって、実験結果がよく解釈できることを示した。彗星の太陽系星雲内凝縮説では、氷の凝縮温度が高いため、彗星核の氷は結晶であることが要請されるが、その後の紫外線や宇宙線照射により、アモルファス化する可能性があることが明らかになった。
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