研究概要 |
1.南極で発見された化学的に最も始源的と考えられるCI炭素質コンドライト(Yamatoー82162,Yamatoー86720,Belgicaー7904)の詳細かつ総合的な岩石鉱物学的な研究を行った。その結果、いずれも普通のCI隕石とは多くの異なった性質を示すことがわかった。特に重要な点は、いずれの隕石も500ー700℃の熱による影響を受けており、揮発性元素の損失が認められることである。これら隕石は普通のCI隕石とは異なった歴史を経たことは明らかであり、そのことは即ちC隕石母天体の物理化学的条件がかなり不均一であったこと、そしてCI隕石母天体にもかなりの高温を発生する熱源があったことを示している。 2.Y82162 CI隕石の中に層状ケイ酸塩からなる脈が存在することを発見した。これまで炭素質コンドライトマトリックスの大部分を占める層状ケイ酸塩が、太陽星雲ガスからの直接凝縮物か、あるいは母天体集積後に氷が溶解した水との反応生成物か、長い間問題になって来た。今回の発見は後者の成因説を強く支持するとともに、水質変成が母天体表層での角れき岩化過程と同時に進行したこと示す証拠として重要である。 3.これまで層状ケイ酸塩が含まれておらず、水の関与する変成を受けていないと考えられていたCVタイプ炭素質コンドライトの一つモコイア隕石の中にかなりの量の層状ケイ酸塩が存在することを見出した。透過型電子顕微鏡を用い、その鉱物種はサポナイト及びNaに富むフロゴパイトであることがわかった。更にこれらの層状ケイ酸塩はオリビン、輝石といった無水ケイ酸塩を交代変成して出来ていることが明らかになった。今回の研究によって、CV隕石中の層状ケイ酸塩は水質変成生成物であり、その変成はCI、CM隕石のように集積後の母天体で起こったのではなく、集積以前に既に起こっていたことが強く示唆される。
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