研究概要 |
日本列島に産する上部マントル起源の捕獲岩を地質学的・岩石学的に検討した結果、以下の事実が判明した。(1)日本列島の下部地殻〜上部マントルは極めて不均質である。不均質性をもたらす要因として、ダナイト〜パイロクシナイト(グル-プI)からなるキュムラス・マントルの発達の程度の違い、マントルかんらん岩の岩石学的性質(枯渇度)の違い、新しい、Fe、Alに富むマントル〜下部地殻物質(グル-プII)のネットワ-クの付加の程度の違い、および加水化の程度の違いである。(2)アルカリ玄武岩マグマなどによる深部岩石の選択的捕獲が認められる。前述の極めて若井(多くは15Ma以後の)岩石(グル-プII;一部は未固結?)がネットワ-ク状に存在する場合、アルカリ玄武岩マグマはそこを選択的に通過してしまい、その部分にもともと存在していたグル-プIの岩石を捕獲しない。かわりにグル-プIIの岩石やメガクリストが捕獲されることになる。(3)日本列島下の上部マントルかんらん岩における枯渇度の多様性は、相伴う集積岩(特に、ダナイト)の多少によるように思える。すなわち、ダナイトを初めとする集積岩捕獲岩を伴う場合、マントルかんらん岩は、高Cr#スピネルを有するレ-ルゾライトまたはハルツバ-ジャイトを必ず含む(黒瀬、野山岳、荒戸山、新宮)。これは、最近のアルプス型かんらん岩体における観察事実と調和的である(例えば、Nicolas,1989;Takahashi,1991)。(4)日本列島の深部の基本的構造は、深部よりマントルかんらん岩、ダナイト〜ウェブステライト、かんらん石ガブロ(またはそれの変成したスピネルウェブステライト)、輝石ガブロ(マフィック・グラニュライト)である。一部は後に加水され、ホルンブレンド・ウェブステライト、ホルンブレンド・ガブロ(または角閃岩)などが生じている。
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