研究概要 |
本研究はエレクトロン.マイクロプローブの2次元素分布を画像解析を徹底的に利用し,岩石の構成鉱物間の化学平衡の範囲を厳密に決め,それによって岩石の温度/圧力履歴を精密に決定しようとするものである。坂野は低圧変成岩と高圧変成岩,平島は超高圧変成岩研究の中心となり,岡本は理論的研究に参加し画像処理を改良した。 低圧変成岩については院生池田剛が坂野の指導の下で領家変成岩の高温部の累進変成相系列を確立し,領家帯で三波川帯とおなじレベルの岩石学的研究を行う基礎をつくった。同研究で画像処理により領家帯でのざくろ石の成長における結晶粒集合の意義が明らかになり,Yardleyのざくろ石累帯構造の magic temperatutre の概念の限界を示した。 高圧変成岩では坂野はフランシスカンの温度/圧力履歴の通俗的見解に疑問をもち Stanford 大の W.G.Ernst と協力し Diablo 山脈のひすい輝石の組織を検討し,それを過飽和状態からの非可逆反応で形成されたと結論し低温変成岩での安易な相平衡論に警告を発した。またWallis,Radvanec などの博士研究員とともに三波川帯の温度/圧力/変形史を定量的に解明する研究を進めた。平島はWallis,北村と協力して過飽和からの結晶作用の産物であるざくろ石の分域累帯構造を発見した。この問題は引き続き院生と研究中である。 平島は Torino 大の Compagnoni と協力してヨーロッパ Alps の超高圧変成岩の温度/圧力履歴を定量的に決めたほか,中国山東省の超高圧変成岩研究の中心となりコース石,ニーブ閃石などの超高圧鉱物を発見し,この地域が世界的にも稀な大規模な超高圧変成帯であることを明かにした。またマイクロプローブ画像解析により超高圧変成岩の変成温度の上昇/下降が急激な圧力上昇/下降を伴ったことを示した。
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