研究概要 |
ムライトは天然に産する鉱物であると同時に,古くから耐火物として利用されている。近年チッ化ケイ素や炭化ケイ素と同様,超高強度材料として注目されている。ムライトは一般に外来イオンを殆んど固溶しないが,最近クロムが11%も固溶することが発見された。このように多量に固溶するメカニズムは通常のメカニズムでは説明し難い。従って本研究ではクロムを固溶するムライト結晶を合成し,その結晶場スペクトルを解析することにより固溶のメカニズムを解明した。 電気炉を用いて焼結法によりクロムを含有する粉末結晶を合成した。結晶間に介存するガラス質マトリックスはフッ酸と塩酸混液により除去した。得られた結晶はX線,偏光顕微鏡,電子顕微鏡等により観察し,ムライト以外の結晶は存在しないことを確認した。 分光々度計により反射法を用いて結晶場スペクトルを測定した。得られたアナログチャ-トをデジタイザ-によりデジタル化し,パソコンにインプットし,ガウス曲線によりデコンボル-ションを行なった。 結果として2組のスペクトルが得られた。高エネルギ-側の組は正規8面体中のアルミニウムイオンを置換しているものと解釈される。低エネルギ-側の組はムライト結晶中をC軸方向に走る8面体で構成される空のチャンネル中に入るものと解釈される。空のチャンネルを構成する8面体は全部で6種類あるが,スペクトルのデ-タはこのいずれの8面体とも符号せず,結局のところムライトのチャネル中にはもっと小さい8面体があると推定される。この小さな8面体は結晶構造から導くことができる。
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