本研究は、晩期型脈動変光星にみられる不規則性がカオス現象として解釈できるかどうかを、観測によってえられたデ-タから実証的に検討しようとするものである。解析の基礎デ-タをえるため、主な晩期型脈動変光星についての測光観測をおこない、さらにこれまでの観測デ-タを集めた光度曲線デ-タベ-スの完成を目指した。 まず、観測については国立天文台堂平観測所で光電測光観測を行い、ミラ型・半規則型などの長周期変光星についての光度曲線をえた。さらにこれらと比較するため、非常に短周期の変光を示す、脈動白色矮星の一つ、うお座ZZ星の光電測光観測をおこなった。 またデ-タベ-スについては、わが国の過去80年間の100万個以上にのぼる未発表の実視観測を集めたデ-タベ-スを完成することができた。このデ-タベ-スには晩期型脈動変光星のみならず、すべての分類型の約5000個にのぼる変光星の観測デ-タが収められており、本研究のみならず、恒星についての幅広い研究に有用であるので、早急に公開することとする。 以上によってえられた基礎デ-タから、デ-タ数が少なく解析に適さなかった不規則型変光星などを除く、ミラ型・半規則型の脈動変光星とうお座ZZ星にたいして、周期解析や回帰図、次元埋め込み法などの統計的手法をもちいて、これらの変光星にみられる不規則性がカオス現象として解釈できるかどうかを実証的に検討した。その結果、ミラ型・半規則型星については回帰図、次元埋め込み法などでは明確なカオス性は実証できなかった。ただし、カオス性があるとすると、その次元数はミラ型より半規則型が大きいこと。また回帰図からは、いわゆる炭素星が特殊なふるまいを示すことが分かった。さらに、うお座ZZ星についてもカオス性を実証できなかったが、周期変動をとらえることができた。
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