研究概要 |
金属や半導体表面におけるアルカリ金属の吸着現象は、表面物理学のスタ-ト時から注目され多くの研究がされ続けていて、現在、アルカリ原子の飽和吸着量、吸着位置(吸着構造)、電価の移動も含めた電子状態、集団励起の問題(吸着層の金属性の起因)などが、特に注目されている。本研究により明かにされた点を挙げると、Si(100)面において、吸着初期(被覆率θ=〜1%,ただし、ダイマ-の個数をθ=1/2とする)に置けるアルカリ金属(Li,K,Cs)の吸着の類似点としては、1)アルカリ金属は、Si原子のダングリングボンドと強く相互作用を及ぼし、ダイマ-の片側に寄った位置に吸着する、2)吸着により、非対称ダイマ-を安定化する、3)吸着の影響は長距離に及ぶ等があげられる。相違点として、1^1)Liがダイマ-1個の上に吸着するのに対し、KとCsは2個のダイマ-の間に吸着する、2^1)LiとKにおいては、非対称ダイマ-の安定化が長距離であるのに対し、Csにおいては、非対称のダイマ-の安定化はダイマ-数個に制限されているが、表面の、特に空準位の電子状態は、吸着Csの量と比べてかなり広い領域に渡って吸着の影響をうけ、ダイマ-3個おきの周期性がみられる、3^1)吸着量を増加させたとき、KとCsでは(3倍周期の)規則構造がみられるが、Liでは、不規則に吸着し、2x1構造が見えにくくなる等の結果が得られた。従来、これらの系におけるアルカリ吸着位置はいわゆるLevine模型が仮定されていたが、今回のSTM観察によりそれが疑問視されることになる。さらに吸着量を増していくと、Cs吸着系において2x3構造が見られた。また、K吸着において、2x3構造の前兆と考られる構造が、単原子ステップで観察された。しかし、θ<1/3においてアルカリ金属の表面層では、金属的な電子状態を示さないことが明かにされた。
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