1.通常の疎水性コロイドの安定性は、いわゆるDLVOの理論によって大体うまく説明できる。この理論では、コロイド粒子間の相互作用エネルギ-は、電気二重層の相互作用による反発エネルギ-とvan der Waals力による引力エネルギ-との総和で表され、安定性は全エネルギ-の形によって決められる。磁性粒子では、これに磁気的相互作用が付け加えられる。コロイド粒子間の磁気的相互作用として、ダイポ-ル・ダイポ-ル相互作用の近似式がしばしば使われるが、薄板状粒子間の相互作用にこの近似を適用すると誤差が著しく大きくなると予想される。本研究では、薄板状粒子間の磁気的相互作用を微小双極子間の磁気的相互作用の総和として近似して計算し、板状ヘマタイト粒子による凝集体形成の観察結果と比較し、その計算法の妥当性について検討したした。粒子間距離が小さい時、ダイポ-ル・ダイポ-ル近似と微小双極子間の相互用の総和として計算した時との差が大きく、ダイポ-ル・ダイポ-ル近似が微小双極子間の相互作用の総和と一致するようになるのはかなり粒子間距離が大きくなってからである事がわかった。よく精製した薄板ヘマタイト粒子を水溶液中に分散させると、適当な塩濃度の下でface to faceの凝集体が形成されたが、本方法で計算した結果を粒子間の引力エネルギ-として使うと、この時の凝集体形成をうまく説明することができた。 2.板状のヘマタイト粒子は、(001)面の広がった単結晶である。板状ヘマタイト粒子の水素還元によりマグネタイトへの変換を試みたが、変換にともない、微粒子化が起こり、単結晶性を維持したまま変換することは出来なかった。ヘマタイトからマグネタイトへの変換における単結晶性維持には粒子サイズが重要な要因になっているようである。この変換機構については、さらに追及したい。
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