研究概要 |
数kbar程度のヘリウムガス圧下で4.2Kまでの光学実験を成功させるためには種々の困難が予想されるため,まず,窓のない高圧セルを用いて強誘電体(CH_3NHCH_2COOH)_3CaCl_2(TSCC)及び(CH_2NHCH_2COOH)_3CaBr(TSCB)の誘電率及び自発分極を等圧的に4.2Kまで測定する技術を確立した。これによりTSCBが量子強誘電性を示すことが明らかになった。この結果は一部J.J.A.P.29(1990)2519に掲載した。残りはJ.Phys.Soc.Jpn.に掲載予定である。一方,光散乱測定(特にブリルアン散乱)については,35×30×40mm^3程度の窓付きセルを作り,1kbar程度での加圧実験を室温で繰り返えし行った。何分,パッキング等の部品が小さいため,シ-リングは困難を極めたが,何とか1kbarで長時間ホ-ルドするところまでは成功した。低迷光実験を可能にするために,0.8mm程度の立方体状サンプルを作る必要があった。表面からの散乱をできるだけ押えるために,研磨に特殊な技術を開発する必要があった。この開発のためにかなりの時間を要した。更にサンプルをセル中にセットし、低温まで持って行くために,当初考えていたように液体ヘリウムを使用していたのではその操作があまりにも複雑であり,長時間の使用に困難があると判断し,我々は岩谷プランテックで製造されているクライオミニを利用することを考えた。現在1kbarの圧力下で30Kまでの低温でブリルアン散乱スペクトルが得られており,TSCB等の量子強誘電性の研究を進めて行けるめどが付いた処である。
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