研究概要 |
本研究の目的は光子対の量子相関の高感度計測法への応用である.パラメトリック過程で発生した光子対は古典論では説明できない様々な振舞いを示す.その中でも,光子対の同時性は,光子数の固有状態の生成の有効な手段である.本研究の結果は次の2つにまとめられる. 1.光子対の量子相関に関する理論的研究 従来,光子対の理論的研究は場の量子論を使って行なわれることが,殆んどであった.しかし,場の理論では2光子相関や高次干渉に関する直観的描像を得ることは困難である.そこで,本研究では2光子波動関数を導入し,2次元配位空間上の波動現象として光子対の振舞いを捉えることを試みた.特に,光子のボ-ズ粒子としての性格を考慮するためLeinassーMyrheimの対称化の方法を用いた.このような手法により,従来,直観的理解が困難であった様々の2光子相関現象を統一的にしかも簡単に記述できることが明らかになった.とくに,ボ-ズ粒子としての対称性に起因する現象と,パラメトリック蛍光のスペクトルの性質に起因する現象を区別できるようになった.さらに,ヘリウム原子や有機色素のような2電子系とのアナロジ-を見い出すこともできた. 2.ライトシフトを用いた光子数の量子非破壊測定 当初の研究計画では,パラメトリック蛍光による光子対に関する実験を行なう予定であったが,研究の過程でより興味深い量子非破壊測定(QND)の新しいスキ-ムが考案された.そこで計画を一部変更し,その基礎的な実験をおこなった.その方法は,偏光した被測定光による原子の仮想遷移の反作用としてのレベルシフトを磁気共鳴信号のずれとして観測するものである.アルカリ原子を用いた実験の結果,古典的レベルの光を非吸収的に測定することができた.今後は,この方法による量子雑音(shot noise)の測定を試みる予定である.
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