研究概要 |
1.集積回路のメモリの配線に用いられるモリブデンシリサイド膜は,直流マグネトロンスパッタ装置によって作製される。タ-ゲットと基板の距離やタ-ゲットの消耗の分布を変えた時に膜厚や組成の分布がどのように変化するかを調べ,その結果を,モリブデン原子とシリコン原子の放出角度分布を考慮したモデルによって説明した。また,モリブデン原子とシリコン原子の放出角度分布の測定を試み,モリブデン原子はタ-ゲット法線方向に対し約60度の方向に放出されやすいこと,シリコン原子はほぼ等方的に放出されることを確認すると共に,得られた角度分布を用いてマグネトロンスパッタ装置による膜の組成分布を計算し,測定で観察されるような組成の不均一が現れることを示した。ところで,集積回路では,基板即ちシリコンウェハの表面には凹凸があり,膜はウェハ面に対して傾いた面や段の陰になった部分にも堆積する。モリブデンとシリコンの角度分布が異なると,そのような部分では膜の組成が平坦部分と異なるということが予想される。今後,測定で得られた角度分布を用い,計算機シミュレ-ションによってこの問題を検討する予定である。 2.本研究テ-マの題名からはやや外れるが,原子の放出角度分布が膜の均一性に影響するという点で本研究テ-マと深く関係する問題,即ち,複合タ-ゲットによる合金膜の組成分布,さらには金属膜の膜厚分布に関しても研究を行った。扇形の複合タ-ゲットのモザイク模様の分割数と組成の均一性の関係を調べ,均一な膜を得るには分割数を16程度以上にする必要があることを示した。金属膜については,放電電圧を変えてアミニウム,銅,モリブデンの膜厚分布を調べた。得られた膜厚分布は,電圧が高くなるに従って垂直方向に放出されやすくなることを示唆するような振舞を示した。
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