研究概要 |
平成2年度に製作した最高140m/s(マッハ0.4)の高速気流を発生することのできる吐出形の風洞を使用し,水平方向の一様気流中に,内径0.9mmのステンレスパイプ製のインジェクタから鉛直上方に噴射した水噴流の微粒化過程を調べた。噴霧の連続光写真から噴霧の気流上流側の外縁および気流下流側の内縁を測定し,またYAGレ-ザを光源としてシ-ト光写真から噴射後の液柱断面の変形と分裂過程を観察した。ザウタ平均粒径はフランホ-ヘル回折理論に基づく粒径測定装置を用いて測定し液体の分散量は直接サンプリングによって測定した。さらにRayleighーTaylorの液滴の分裂モデルを用いて,液滴径の変化と液滴の軌跡の数値計算を行ない,上記の測定結果と比較した。インジェクタから噴射された直後の部分は液柱状であり,気流速度が高い場合には,この液柱の断面が横からの気流によって円形から三日月状に変形し,2か所の三日月の端から微小な液滴が形成され噴霧となる。また液柱後流には液滴の存在しない空洞部分がある。一方,気流速度が小さい場合には,液柱全体が気流下流方向に曲がりながら振動し,その波長が大きくなって波うつようになり,比較的大きな液塊となって分裂する。計算結果より,インジェクタに近い位置で形成される液滴のうち,噴霧外縁付近の大きな液滴は下流に向かう間に再分裂するが,噴霧内縁付近の小さな液滴はほとんど再分裂を起こさない。噴霧の外縁は,噴射時の初期粒径がインジェクタ内径と同じ900μmの液滴の軌跡に,内縁は初期粒径10μmの液滴の軌跡に良く一致した。液滴径の分布の計算結果は,インジェクタから下流の比較的遠い位置で,ザウタ平均粒径の分布の測定結果に比較的良い一致を示した。しかしインジェクタに近い位置では,液滴径の分布の計算結果とザウタ平均粒径の分布の測定結果の一致は良くなく,計算に液柱からの分裂モデルを導入する必要があると考えられる。
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