研究概要 |
高速度鋼HAP50の板厚2mm,板幅6mm,長さ80mmの平板試験片に窒化チタンTiN皮膜をCVD,PVD法によりコ-ティングし、平面曲げのフレッティング疲労試験、X線残留応力測定,およびFEMによる応力解析などを行った。その結果,以下のような成果が得られた。 (1)TiNコ-ティング材のフレッティング疲労試験 TiN皮膜をCVD法とPVD法のいずれにより処理したかにより,フレッティング疲労特性には大きな差が生じた。例えば,10^6回疲労強度は,PVD法の方がCVD法よりも75%程度高い値であった。皮膜厚さの影響は、あまり大きくはないが,2μmの厚さに比べ,10μmの厚さの方が,寿命で2〜3倍程度長いという結果が得られた。ただし、相手材の皮膜の有無は、強度・寿命にはほとんど無関係であった。相対すべりを変えるために、面圧を二通りに変えたが,その影響は面圧が100MPaの場合よりも60MPaの場合には、寿命が3倍であった。 (2)フレッティング摩耗 TiN皮膜の摩耗と寿命には関連性がみられた。また,皮膜に生じた微小な割れが疲労き裂の起点となることが,見い出された。 (3)X線応力測定 PVD法による皮膜,CVD法による2μmの皮膜については、X線により残留応力を測定することは、不可能であったが,CVD法の6μm、10μmの場合には、それぞれ1.3GPa,2.0GPaの圧縮応力値が測定された。 (4)FEMによる応力解析 コ-ティング皮膜のヤング率、厚さの母材の応力に及ぼす影響が解析された。皮膜のヤング率が高いとき,また皮膜の厚さが大きいと母材の応力が軽減されることが示され,(1)〜(3)の結果との関連性を示すことができた。
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