研究概要 |
本研究は,平成2年度及び3年度の2年間にわたり、研究課題「イオンビ-ムミキシング法によるTiN膜の作製とその疲労破壊の解明」について行われたものである。材料表面にセラミック薄膜を被覆することによって耐疲労特性,耐摩耗性,耐食性などの機械的特性や電気的、光学的特性などの機能を飛躍的に向上させる可能性を持つイオンビ-ム技術を使ってTiN膜やCrN膜を鋼板表面に被覆することによって,鋼板の疲労強度及び疲労寿命に及ぼすセラミック薄膜の影響を検討した。まず,機械・構造物の部材としてよく使われる60キロ級高張力鋼に対して,ダイナミックミキシング法を用いて組成を変えたTiNx膜を数種類成膜して,それが鋼板の疲労寿命に及ぼす影響を解明した。続いて,TiNx膜を作製するとき,作製条件を変えることによって組織や硬さの変わった薄膜が得られることを明らかにして,それが疲労挙動に与える改質効果をき裂発生過程を連続的に観察することによって明らかにした。このように鋼板表面にTiN膜を被覆することによって疲労寿命は著しく改善されることが分かったので,疲労寿命の改善効果に及ぼすセラミック膜厚の影響を検討し,膜厚が厚いほどその効果が著しいことを示した。さらに,セラミック薄膜を作製する手法をダイナミックミキシング法からマルチア-クPVD法に変えたとき,同様なTiN膜,CrN膜を成膜し,成膜方法が疲労挙動に与える影響を検討し,処理温度が低いほど疲労寿命の改善が著しいことを明らかにした。これらの膜の密着強度や摩耗係数を調べた。これらの膜の構造をX線回折,XPS,AESを使って調べ,薄膜の特性との関連を解明した。
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